ビットコイン分裂の危機、とまで言われてしまった原因はそもそもなぜでしょうか? 発端となっているのは、ビットコインのシステムが原因とする制約「スケーラビリティ」と呼ばれる問題です。
スケーラビリティとは、ビットコインは一つのブロックに記録できる取引が1MBまでと決められており、1MBを超える取引が実行された場合、全ての取引を記録する事が出来なくなる、という問題で、これが原因で「トランザクションの遅延」や「手数料の高騰」が発生してしまい、昨今の利用者の増加に伴い問題が表面化してきました。
これをクリアする為に、BIP(Bitcoin Improvement Proposals)という形で様々な提案が出されてきました。
コア開発者がSegit(BIP141)を提案
ビットコインの「スケーラビリティ問題」をクリアする為には「フォーク」というアップデートを行い、トランザクションに対応できるシステムへ仕様変更する必要があり、コア開発者は2016年10月対応策として「Segwit」というソフトフォークを提案しました。
segwitとはトランザクションデータの圧縮や「Lightning Network」といったオフチェーン取引機能を実装し、ブロック1つに記録できるトランザクションの数を拡張します。
BIP141で「マイナーの95%の承認で有効化される」とされていましたが、マイナー側としてはsegwitによるオフチェーン取引が増加する事でマイニング報酬が減ってしまうという事で支持が得られず、アップデートに至りませんでした。
実は今回が初めてではない分裂の危機
1.コミュニティの分裂:Bitcoin Unlimited誕生
ビットコインのスケーラビリティ問題は、Segwitが開発されるまで約3年間開発者の中で議論されていました。
Bitcoin RoundtableやSatoshi Roundtableと言った非公開会合も何度か開催され、ビットコインの意思決定が不透明化していた経緯があり、コミュニティ分裂が顕著になった結果Segwitに対抗する形で2016年1月に「Bitcoin Unlimited(BU)」が発表されました。
Bitcoin Unlimitedではブロックサイズの上限を撤廃したハードフォークを主張し、マイニングプール最大手のAntpool等が支持するだけでなく、Segwit不支持派のマイナーの多くが支持をしたことでBTC派とBU派で対立をしていました。
BitcoinからBitcoin Unlimitedに分裂することによるデメリットは双方に大きく、コミュニティ内でもビットコイン分裂の危機として議論されていましたが、2017年3月に大手取引所19社が共同で「Bitcoin Unlimitedのハードフォークが実行された場合、ビットコイン(BTC)とは別の通貨(BTU)として扱う」という声明を出した事で、Bitcoin Unlimitedを採用するメリットが薄れてきました。
2.Segwit有効化を巡る対立 – UASF&UAHF
BIP141によるSegwit実装が遅れ、Bitcoin Unlimiteのハードフォークのリスクがある中、Segwit採用をすべく、「UASF」が2017年3月12日に提案されました。
UASF「User-Activated Soft Fork」の略称で、2017年8月1日以後はマイナーの95%の支持がなくてもSegiwtソフトフォークを強制で実行するというものです。
BIP148ではSegwit有効化以降は、有効化されていないブロックは承認されなくなるので、期限である8月1日までにSegwitが有効化されない場合、チェーンの分岐が発生してしまう可能性があり、ユーザーがUASFの支持を広げる中、マイニングプール大手のBitmain社がUAHF(User-Activated Hard Fork)を発表しました。
これ、ユーザー主導によるSegwitの有効化に対抗すべく、bitcoin Unlimitedクライアントを利用してマイニングを行い、意図したハードフォークを引き起こしてビットコインを分裂させようという動きです。
Segwit2X(BIP91)提案で分裂回避
2017年5月23日、DCG(Degital Currency Group)からBIP91に基づく「SegWit2X」の提案がありました。
Segwitの有効化に必要なマイナーの承認を80%まで下げて、ビットコインのブロックサイズを2MB(要するに2倍)にするというハードフォークを6カ月後に実装するというもので、この提案はSegwitの実装のハードルを下げると同時にブロックサイズの拡張も盛り込んでおり、幅広い支持を集める事に成功しています。
この提案に対し、世界22か国の大手マイニングプールや取引所を含む58社が合意を示して、BIP91は7月23日に正式に有効になりました。
今回の提案に王位をしている58社はビットコイン全体の取引量の8割を占めており、Segwit2Xのハードフォークが実行される可能性は高いと言われる一方、コア開発者はSegwit2Xのコア開発者は反対をしている状況の為、新しい分裂の可能性もあります。
ユーザーはどうする?
日本ではbitFlyerが7月31日から8月1日まで、その他主だった取引所は7月23日から8月1日までリプレイアタックを防ぐ為にオンチェーン取引を停止する事を発表しています。
リプレイアタックとは、ハードフォーク直後に送金処理を行うと二つの通貨が送られてしまうというバグです。
チェーンに分岐が発生した場合は送金・受信はソフトウェア側が対応する必要があります。
送金先が二つのコインを識別できない場合、送った通貨が引き出せなくなり、実質消滅という可能性もある為、そのリスクを回避する為の取引停止措置だと思われます。
ハードフォークや意図しない分岐のリスクはSegwit2Xの有効化により下がりはしたものの、安全の為に8月1日前後のビットコインの送金は控えておいた方が良いでしょう。
コメントはまだありません